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情報処理技術者試験

1.情報処理技術者試験の全体像

1.1 試験概要

(1)試験科目

(2)レベル

・ITSS(ITスキル標準)によるレベルです。ITSSは、IPAの資料(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/itss1.html)によると、「産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練等に有用な「ものさし」(共通枠組)を提供しようとするもの」。
・ただし、レベルと難易度が必ずしも一致するわけではありません
・たとえば、FE(基本情報)はがっつりプログラミング(アルゴリズム)の試験なので、プログラミング未経験者にはかなり難しい試験です(R6の合格率は40.8%)。同じレベル2であれば、情報セキュリティマネジメントのほうが取りやすい(R6年の合格率69.0%)と思う人が多いのではないでしょうか。
・また、レベル4の試験も、分野が多岐にわたるので、人によっては得意不得意があります。また、人気の資格(ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ)は、どうしても狭き門になりがちです。

レベル 試験
4 ITストラテジスト、システム監査技術者、プロジェクトマネージャ、システムアーキテクト、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリスト、情報処理安全確保支援士、ITサービスマネージャ
3 応用情報技術者試験
2 基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験
1 ITパスポート試験
(3)試験時間、出題形式、出題数、解答数

❶ITパスポート、基本情報、情報セキュリティマネジメント
選択式で答える。CBT方式なので、いつでも受験可能。

❷応用情報、高度区分
午前は選択式、午後は記述式。年に2回(4月と10月)に会場で受験する。高度区分には、論文試験もある。

(出典:https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/ps6vr7000000i0p0-att/youkou_ver5_0.pdf

1.2 情報処理技術者試験の資格取得の意義

「資格なんて不要」という人もいますし、実際、資格無しでも活躍できます。
とはいえ、仕事ができる人は、資格を持っていたりすることもありますし、民間企業では高額な報奨金を出すところもあり、一定の価値があるものだと思っています。
 私が考える資格の意義をお伝えします。
❶必須の知識となりつつある
・DXが求められる今の時代、ITの基礎知識は多くの人にとって求められてる
・自分自身でシステムの設計や開発する立場になかったとしても、最低限、言葉を知っておかないと、何の話なのかさっぱりわからない。
❷業務で活躍できる
・資格をもっていることで、その分野に関する知識があると認めてもらえる。※ベンダにもなめられない。言いなりにならない。
・資格に合格するだけの知識を持っていることで、業務で活躍できる。 →いい仕事ができる。組織や社会に貢献できる。やりがいがある。
❸単純にうれしい
・ネットでも批判ばかりが目立つ世の中になり、褒められることも少なくなった時代に感じます。そんな中、スキルアップという目標を掲げ、それに向かって努力し、合格して経済産業省の大臣から合格証をいただけるというのは、意外にうれしいものです。生きててよかったーと思うことすらあります(笑)。

1.3 ベンダ資格と比較した国家資格のメリット

・IT資格には、情報処理技術者試験に代表される国家資格のほかに、各ベンダが実施する「ベンダ資格」もあります。ベンダ資格は、実務に直結していたり、いつでも受験できるといった利点があり、国家資格とは異なる魅力があります。どちらが優れているというものではなく、目的に応じて選ぶのがよいでしょう。ちなみに私自身も、ベンダ資格は数多く取得しており、合格した数だけで言うと、国家資格の2倍以上です。
・以下、ベンダ資格と比較した国家資格のメリットです。

項番 項目 内容
1 社会的な信頼度 国家資格は知名度・社会的信用が高く、履歴書にも書きやすい
2 受験料が安い 情報処理技術者試験は、受験料が比較的安価で、現在は7,500円です。
一方、ベンダ資格は3万円以上かかるものも少なくありません。
3 維持費が不要 情報処理安全確保支援士を除く。ベンダ試験の場合、資格維持に
研修や費用が掛かる場合がある。それが結構高い。
4 有効期限なし 一度取れば失効せず、生涯有効。※ベンダ資格の場合、有効期限
が定められていることがある。
5 普遍的な知識 特定の製品に依存しない普遍的な知識を得ることができる 
※ただし、これはデメリットでもあり、ベンダ資格の方が、特定
製品に特化した知識が得られる
6 試験内容が公開 試験範囲や過去問が公開されており独学向き。ベンダ試験の場合、
高額な研修を受けることが合格の近道だったりするものもある

1.4 効率的な勉強方法

・ベンダ試験に関しては、研修に行ったら傾向と対策を教えてくれて、高い確率で受かるなどはありますが、国家試験の場合は、どちらかというと真面目に勉強するしかありません。
・とはいえ、そうはいいながらもスルスルっと受かる人とそうでない人がいて、合格する人は、傾向と対策をしっかりしている人です。ようは、「こうやったら受かる」という青写真をしっかり描くことが大事です。
・「これをやったら絶対に受かる」という青写真がしっかり描ければ、「どうせ落ちるし」と思いながら勉強するのとは違い、やる気も高まり、最後まで走り続ける原動力になるでしょう。

2.ITパスポート

2.1 試験概要

試験区分 エントリーレベル(レベル1)
受験資格 無し(どなたでも)
対象者像 職業人及びこれから職業人となる者が備えておくべき,
IT に関する共通的な基礎知識をもち,
IT に携わる業務に就くか,
担当業務に対して IT を活用していこうとする者
試験方式 CBT方式(Computer Based Testing)で、
全国の試験会場
試験時間 120分
出題数 100問(4択)
合格基準 IRT(Item Response Theory)による点数で、
・合計で600点以上(1000点満点)→7割程度の正答率が望ましい
・分野別にそれぞれ300点以上(1000点満点)→4割~5割程度の正答率が望ましい
※IRTでは、試験ごとの問題の難易度差を補正し、「誰にでも解ける問題」の得点は
小さく、「難しい問題の正解」は高く評価される
合格発表 受験後すぐに得点がわかるが、正式には翌月中旬ごろ
受験料 7,500円(税込)

2.2 合格率

・令和7年の合格率は、全体で50.9%
・学生と社会人と比べると、短大や小中高の合格率が低くなっているが、大学は50.3%で大学院は64.0%である。
・IT系(51.4%)と非IT系(54.3%)を比較すると、非IT系の方が合格率が少し高い。
→【考察】ITの専門知識が必要というよりは、きちんと勉強したかどうかが大事だと想定される。

(出典:https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/openinfo/pdf/statistics/202504_ip_shikenkekka.pdf

2.3 試験のジャンル

出題数 100 問のうち,総合評価は 92 問で行い,残りの 8 問は今後出題する問題を評価するために使われる。また,分分野別評価の問題数は,ストラテジ系 32 問,マネジメント系 18 問,テクノロジ系 42 問とす

分野 出題数 内容
ストラテジ系 32問 企業活動、法務、経営戦略、システム戦略など
マネジメント系 18問 システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術、
プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、
システム監査など
テクノロジ系 42問 基礎理論、アルゴリズムとプログラミング、コンピュータ構成要素、
システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア、情報デザイン、
情報メディア、データベース、ネットワーク、セキュリティ

↑に記載があるとおり、プログラム問題も少しだけ出ます

2.4 問題例

過去問は、以下のサイトに公開されています。
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/openinfo/questions.html
いくつか抜粋します。
❶ストラテジ系(令和7年度分より)

【正解】
問1:ウ:「A社の責任者の指揮命令」というのがNG
問2:ウ:ISO 14001は環境マネジメントシステム(EMS)、JIS Q 15001は個人情報保護マネジメントシステム(PMS)、ISO 9001は品質マネジメントシステム(QMS)

❷マネジメント系

【正解】
問36:
問37:エ:SLA:Service Level Agreement(サービスレベル合意)、SLM:Service Level Management(サービスレベル管理)

❸テクノロジ系

【正解】
問56:ア:BLE(Bluetooth Low Energy)は、従来(最大3Mbps程度)に比べて低速(〜1Mbps)だが、消費電力が非常に少ない
問57:イ:proxy = 「代理人」という意味です

2.5 難易度

(1)難しいと思う理由

・範囲がとてつもなく広い
・ITの基礎スキルが必要で、問題も難しい →勉強して知識を覚えないと解けない

(2)それほど難しい試験とも思わない理由

・社会人としての経験や、計算などで解ける問題があり、一部は事前知識無しでも解ける問題もある。 →2割くらいは正解できると思う。
・しょせんは4択なので、2択にまで絞れることも多い。→全部2択であれば5割なので、合格まであと少し。
・過去と同じ傾向の問題や類似問題がよく出る。→過去問を繰り返し解けば、合格できる。
・ちょっと勉強すれば、高得点は無理でも、合格はできる可能性が十分にある。

2.6 勉強に使えるサイト

・Ping-t
合格体験記が掲載されています。
https://mondai.ping-t.com/g/passings?l=10
また、過去問もWebで解くことができます。会員登録が必要です。

・過去問道場
過去に出た問題を出題してくれて、また、詳細な解説まであります。会員登録も不要です。
https://www.itpassportsiken.com/ipkakomon.php

・試験センター
公式のサイトです。PDFで印刷して問題を解くにば便利ですが、スマホ等で過去問を解くのであれば、少し解きづらいと思います。
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/openinfo/questions.html

2.7 勉強法について

(1)勉強の方法

以下の方法が考えられます。どれを選択するか、どういう順番でやるかは人それぞれですが、3)の過去問だけはしっかり解いた方がいいでしょう。
1)参考書による勉強
2)Youtubeによる解説動画
3)過去問を解く
→ ・過去問道場などのWebサイト、「ITパスポート全問解説」のアプリ、過去問の書籍、試験センター過去問を印刷して解く、など
  ・上記のWebサイトなので、8割くらい解けるようにしてから試験を受けたいところです。

(2)合格までの勉強時間

合格までの勉強時間は、どれだけの知識レベルがあるかによって変わってきますが、1週間程度の勉強で合格した人もたくさんいらっしゃるようです。

(3)勉強の工夫

・試験日を先に決めましょう。決めないとやる気が出ないと思います。
・通勤時間を活用し、スマホで問題を解いてみましょう。
・全く同じ問題が出るわけではないので、内容を「暗記する」のではなく、「理解する」ことを意識しましょう。
・(お金はかかりますが、)落ちてもまた受ければいいと割り切り、とりあえず受けてみようという気楽な感じで受験されるのはどうでしょうか。

(4)試験当日

・見直しができ、修正ができるので、難しい問題は適当に選択しておいて、次に進みましょう。
・100問で120分なので、1問1分くらいのペースかと。4択なので、時間がギリギリという感じでもないでしょう。ただ、あまりゆっくりやると時間が足らなくなる可能性があります。
・見たことが無い問題も出るでしょうが、採点対象外の問題(8問あります)の可能性もあるので、気にしないようにしましょう。

3.基本情報技術者試験

3.1 試験について

(1)試験概要
項目 内容
試験区分 エントリーレベル(レベル2)
受験資格 無し(どなたでも)
試験方式 CBT方式(Computer Based Testing)で、
全国の試験会場
試験時間/
出題数
科目A試験 多肢選択式(四肢択一)60問90分
科目B試験 多肢選択式20問100分
合格基準 各科目ごとにIRT方式による600点以上(1000点満点)
合格発表 受験後、数日~1週間以内にマイページで確認可能
受験料 7,500円(税込)

※2023年4月よりCBT方式の通年試験に変更された。CBTではメモ用紙があるので、ペンで計算やメモなどを書くことができる。

(2)合格率

❶合格率(年度別)
・そこそこ高いようにも見えますが、CBTにしては厳しめだと感じています。というのも、CBTはいつでも受けられるということで、ある程度勉強した人が受けるからです。ある程度勉強した人が受けてこの合格率なので、まあまあ厳しいかも。

年度 合格率 備考
令和5年(2023年度) 47.1% 4月から新制度スタート
令和6年(2024年度) 40.8%  
令和7年(2025年度) 39.8% 4月と5月のみ

・2023年4月は、制度変更が行われた直後であったため、63.8%の合格率でしたが、その後は下がっています。令和5年度も、後半の合格率は40%ちょいという感じでした。

❷基本情報技術者試験合格率(学生と社会人別・令和6年)
・学生には高校生なども含んでいます。大学生、大学院生の合格率が高いです。

区分 合格率
社会人 40.3%
学生 41.9%
┗大学院 76.3%
┗大学 55.9%

❸基本情報技術者試験合格率(経験年数別・令和6年)
・これを見てもらうとわかりますが、経験年数はほとんど関係ないということ。それよりも、しっかり勉強したかが大事です。

経験年数 合格率
経験なし 43.8%
1年未満 50.7%
2年未満 41.6%
2年以上4年未満 41.2%
4年以上6年未満 39.4%
6年以上8年未満 38.8%
8年以上10年未満 37.5%
10年以上12年未満 35.4%
(※以降、年数が増えるごとに合格率は低下)
(3)得点分布と突破率

・以下は、令和7年4月実施分の得点分布です。合格ラインの600点前後に密集しています。つまり、合格者と不合格者は紙一重であることがよくあります。

(出典:https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/ps6vr70000016ew6-att/202504_fe_hyoukaten_bunpu.pdf
・科目Bだけの突破率

実施時期 受験者総数 科目B合格者 突破率 全体の合格率
令和7年4月 11,341 5,071 44.7% 37.9%
令和7年5月 11,326 5,440 48.0% 41.7%

3.2 科目A試験

(1)概要

・従来の午前試験の内容。
・60問を90分で解答します。1問1.5分ペース。
・60問中4問は今後のための調査用の問題
・試験のシラバス(概要など)は以下
https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/nq6ept00000014d9-att/syllabus_fe_ver9_0.pdf
・科目A試験免除制度もあり、それを活用すると、科目Bだけを受ければ合格になります。

(2)ジャンル
ジャンル 出題数 大分類1 中分類
テクノロジ系 全部で41問 基礎理論 基礎理論、アルゴリズムとプログラミング
 〃    コンピュータシステム コンピュータ構成要素、システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア
 〃    技術要素 ユーザーインターフェース、情報メディア、データベース、ネットワーク、セキュリティ
マネジメント系 全部で7問 プロジェクトマネジメント プロジェクトマネジメント
 〃    サービスマネジメント サービスマネジメント、システム監査
ストラテジ系 全部で11問 システム戦略 システム戦略、システム企画
 〃    経営戦略 経営戦略マネジメント、技術戦略マネジメント、ビジネスインダストリ
 〃    企業と法務 企業活動、法務
(3)問題例

過去問は、以下のサイトに公開されています。
・令和6年度のサンプル問題(科目A20問、科目B6問)
https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/sg_fe/koukai/2024r06.html
・令和5年度のサンプル問題(科目A20問、科目B6問)
https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/sg_fe/koukai/2023r05.html
・令和4年に発表されたサンプル問題(科目Aが60問)
https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/henkou/2022/gmcbt80000007cfs-att/fe_kamoku_a_set_sample_qs.pdf
・以下、ストラテジスト系の問題です。特に社会人経験が長い人の場合、ITの知識が少なくても解けるのではないでしょうか。

解答はこちら。
 問16:
 問17:
 選択肢ア:正解選択肢です
 選択肢イ:レッドオーシャン
 選択肢ウ:Time to Market(TTM)などが該当するでしょう。
 選択肢エ:死の谷

(3)科目A試験免除制度

・詳細は以下に説明があります。
https://www.ipa.go.jp/shiken/about/menjo-fe.html
・まず、IPAが認定した講座を修了する必要があり、その後「科目A試験免除に係る修了試験」に合格すると、科目A試験を1年間免除できる。
ただし、科目A免除試験をいつでも受けられるわけではなく、1つのコースで最大2回まで。時期は、6月、7月か12月、1月。
・試験は、本番の科目Aと同じく90分60問で4択。合格ラインは6割です。
・こうすることで、科目Aに合格し、科目Bに専念することができます
・難易度ですが、本試験より免除の試験の方が簡単という噂もあります。
・多くの場合は、CBTではなく会場での受験になるでしょう。
・免除制度は、お金がかかることがデメリットと言えます。

3.3 科目B試験

(1)出題内容

・合計20問を100分で解く。
・ジャンルおよび出題数は以下。

ジャンル 出題数
アルゴリズムとプログラミング 16問
セキュリティ 4問

※1問は今後のためなので19問で評価
・アルゴリズムとプログラムですが、プログラムの処理結果を答える問題と、プログラムの穴埋めの問題の2つがある。

(2)プログラム言語

・プログラム言語は、疑似言語。なので、CやJavaやPythonなどの特定の言語ではない。
・疑似言語の仕様は、以下に掲載されている。2ページしかないので、読むだけであればそれほど苦痛ではないと思います。※プログラム言語経験があればの話ですが。
https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/ps6vr7000000i9dp-att/shiken_yougo_ver5_0.pdf
・以下は上記の抜粋です。

(3)過去問とサンプル問題

残念ながら、公に公開されている問題(過去問とサンプル問題)は、以下の38問しかありません。あとは、出版社などが出している予想問題を活用するしかないでしょう。
・サンプル問題
https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/ps6vr7000000oett-att/fe_kamoku_b_sample.pdf
・問題冊子・解答例(2024年度、令和6年度)
https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/sg_fe/koukai/eid2eo0000007g1d-att/2024r06_fe_kamoku_b_qs.pdf
・サンプル問題(2022年12月26日掲載)(20問)
https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/henkou/2022/20221226.html
・令和5年 基本情報技術者試験 科目B 公開問題(6問)
https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/sg_fe/koukai/2023r05.html

(4)問題を解いてみよう

❷のセキュリティは問題文が長いので、図1の上の部分だけを読んで、いきなり設問を読んでもいいと思います。

❶プログラミング

❷セキュリティ


・❶の解説ですが、これは、x、y、zの最大値返す(return)プログラムです。ifの条件分を満たした場合、returnとして最大値を返します。なので、空欄のif文の条件では、returnとしてxになっているので、xが最大となる条件式を入れます。
なんとなく想像がつくと思います。たとえば、イの条件であれば、xは最大です。でも、ウやオでもxは最大ですよね。ただし、たとえばオの場合、x = 9, y = 8, z = 5というの場合、xはもちろん最大値なのですが、条件を満たさないのです。よって、正解はです。
・❷セキュリティの解説です。なんとなくですが、「不正アクセスのリスクが増加」とあって、そのリスクを低減することが目的のようです。不正アクセスされない対策として、2要素認証は有効ですよね。よって、正解はです。
他の選択肢もみておきましょう。
ア:A社の社内から不正アクセスはあまりないでしょう。多くはA社外の攻撃者です。監視しても意味がありません。
イ:制限したら使いにくそうです。
・どうですか?解けましたか?2問とも正解であれば、センスがいいです。合格できそうです。1問だけだったり、両方間違えたとしても、少し勉強すれば解けそうではないでしょうか。

3.4 難易度

(1)難しいと思う理由

・科目Aは範囲がとても広い →ITパスポート未受験からのスタートだと、かなり大変
・科目Bは、プログラムの試験なので、未経験者にはハードルが高い。そもそも、プログラムをイチから勉強するのはすごく大変。業務で使うこともないですし、プログラムはAIが書いてくれますからねー。

(2)合格できるんじゃないかと思えてしまう理由

・科目Aに関して、社会人としての経験や、計算などで解ける問題があり、一部は事前知識無しでも解ける問題もある。 →2割くらいは正解できると思う。
・科目Aは、しょせんは4択なので、2択にまで絞れることも多い。→全部2択であれば5割なので、合格まであと少し。
・科目Bは、4択~6択なので、ヤマ勘では難しい。しかし、プログラムをイチから書くのではなく、選ぶという点では、経験が浅くても十分に戦える。
・科目Aは、過去と同じ傾向の問題や類似問題がよく出る。→過去問を繰り返し解けば、合格できる。
・科目Bも基本的には過去問をたくさん解けば合格できる。※ただしある程度の勉強時間は必要。最低でも2か月間くらいは必要と思います。

3.5 勉強法について

(1)勉強の方法

以下の方法が考えられます。どれを選択するか、どういう順番でやるかは人それぞれですが、3)の過去問だけはしっかり解いた方がいいでしょう。
1)参考書による勉強
2)Youtubeによる解説動画
 私は見たことがありませんが、https://www.youtube.com/@kihonzyouhou のサイトは登録者数も多く、人気のようです。
3)過去問を解く
・過去問道場などのWebサイト、過去問の書籍、試験センター過去問を印刷して解く、などです。
・科目Aに関しては、試験がCBTに変更される前の過去問も含め、繰り返し勉強すれば合格ラインを超えるのことはできます。
・IPAから公式に出されている科目Bの過去問が少ないので、市販の参考書や予想問題集も活用しましょう。

(2)合格までの勉強時間

・合格までの勉強時間は、どれだけの知識レベルがあるかによって変わってきます。ITパスポートを合格し、ITの基礎がある人であれば、2~3か月の勉強時間かと思います。
・ただ、午後のアルゴリズムやプログラミングに関しては、経験があるか無いかで勉強時間は大きく変わります。日常的にプログラミングに触れている人であれば、ストレスなく解ける可能性があります。

(3)勉強の工夫

・試験日を先に決めましょう。決めないとやる気が出ないと思います。
・通勤時間を活用し、科目Aに関しては、スマホを活用するなどして問題を解いてみましょう。
・全く同じ問題が出るわけではないので、内容を「暗記する」のではなく、「理解する」ことを意識しましょう。
・(お金はかかりますが、)「落ちても次がある」と割り切り、まずは一度受けてみるのもいいでしょう。雰囲気や自分の実力がわかりますし、1回で受かる可能性もあります。

(4)試験当日

・見直しができ、修正ができるので、難しい問題は適当に選択しておいて、次に進みましょう。
・採点対象外の問題(科目Aは4問、科目Bは1問)が含まれています。知らない問題があっても焦らず進めましょう。

(5)コツや勉強法

・必須ではないのですが、IP(ITパスポート)は受けて、合格しておいた方がいいと思う派です。

Q.IPをうけずにいきなりFEを受けてもいいのでは?

A.たしかにそうです。ですが、一つずつ階段を上がるという点と、マイルストーンになる点、モチベーションを維持しやすいなどから、受けておくのも選択肢です。

・特にプログラミングが難しいので、FEは受けずにAPを受けてもいいと思います。APに合格するために、FEが必須ではなく、場合によっては遠回りになる可能性だってあります。
・科目Bでは、当たり前ですが、問題文や設問文をよく読むことがポイントです。よく読むと、ヒントが書かれてあります。そのヒントを忠実に活用して正解選択肢を選ぶことが求められます。
・アルゴリズムは難しいです。プログラマーの仕事をされるのであれば、基礎から完璧に理解することをお勧めします。上っ面の理解だと、新しい問題が出た時に対応できない。アルゴリズムの基礎から、心の底から理解することが大事です。
・単に基本情報に合格することが目的であれば、いいか悪いかはご本人の判断ですが、何度も受けるというのも選択肢です。1度受けたら30日間は受けられないのですが、2回目や3回目くらいで受かるつもりで、何度も受けて、そのうち合格するだろう、という考え方です。意外に2回くらいで受かるかもしれません。
・同じレベル2の資格であれば、FE(基本情報、R6の合格率は40.8%)にこだわらず、SG(情報セキュリティマネジメント試験、R6年の合格率69.0%)のほうが取得しやすいと思います。

3.6 勉強に使えるサイト

❶過去問道場(基本情報技術者試験ドットコム)
https://www.fe-siken.com/fekakomon.php

4.情報セキュリティマネジメント試験

4.1 試験について

(1)試験概要

・ITを利活用する人向けの試験です。その中のセキュリティを利用する人を意識した試験。
・対象者像は「情報システムの利用部門にあって,情報セキュリティリーダーとして,部門の業務遂 行に必要な情報セキュリティ対策や組織が定めた情報セキュリティ諸規程(情報セキ ュリティポリシーを含む組織内諸規程)の目的・内容を適切に理解し,情報及び情報 システムを安全に活用するために,情報セキュリティが確保された状況を実現し,維 持・改善する者」とされています。
・基本情報技術者試験と同じくレベル2に相当
・科目A試験(午前)と科目B試験(午後)で構成される。ただし、基本情報のように科目AとBで時間が分かれているわけではない。120分で一気に解く。
・科目Aが48問で、4択式。科目Bは12問で、4択ではなく5択など。CBT方式なので、記述式の問題はない

(2)合格率

❶合格率(年度別)

年度 合格率
令和5年 72.6%
令和6年 69.0%
令和7年(4月) 69.5%

4.4 問題例

過去問は、以下のサイトに公開されています。
https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/sg_fe/koukai/2024r06.html
たとえば、B問題は以下のような感じの選択式です。

5.応用情報技術者試験

5.1 試験について

(1)試験概要
項目 内容
対象者像 「ITを活用したサービス,製品,システム及びソフトウェアを
作る人材に必要な応用的知識・技能をもち,高度IT人材として
の方向性を確立した者」(試験センターより)
レベル ITSSのレベル3
試験方式 4月と10月に、全国の試験会場にて実施※CBTはありません
試験時間 午前:150分、午後:150分(合計300分)
出題数 午前:四肢択一80問、午後:記述式11問中5問選択
合格基準 午前・午後ともに60%以上の得点で合格
合格発表 試験日から約1か月後(IPA公式サイトで発表)
受験料 7,500円(税込)
(2)合格率

・FEに比べて合格率はかなり低く(=難しく)なっています。ただ、CBTではなく会場受験なので、一般的には合格率は低くなる傾向にあります。※CBTは、合格できそうなタイミングで受験する人が多い。
・経験が増える方が合格率が下がります。経験に依存するというよりは、しっかりと勉強した人が合格するという感じです。
❶年度別合格率

年度 合格率
令和4年春 24.3%
令和4年秋 26.2%
令和5年春 27.2%
令和5年秋 23.2%
令和6年春 23.6%
令和6年秋 28.5%

❷応用情報技術者試験合格率(経験年数別・令和6年)

経験年数 合格率
経験なし 22.6%
1年未満 32.7%
2年未満 30.8%
2年以上4年未満 28.6%
4年以上6年未満 27.9%
6年以上8年未満 25.7%
8年以上10年未満 28.8%
10年以上12年未満 23.9%
(※以降、年数が増えるごとに合格率は低下)
(3)午後試験の突破率

午前の突破率が約5割です。そして、午後の突破率も5割程度です。午前はひたすら覚えるだけですから、もし、午前は突破できるようであれば、午後の突破率である5割で合格ということになります。2人に一人ですから、意外にいけそうでは?

年度 午後の受験者数 午後試験(60点以上)の数 午後突破率 全体の合格率
R6秋 26,048名 12,613名 48.4% 28.5%
R6春 18,597名 8,677名 46.7% 23.6%
R5秋 16,535名 8,753名 52.9% 23.2%
R5春 14,451名 8,805名 60.9% 27.2%
R4秋 18,617名 9,516名 51.1% 26.2%
R4春 15,429名 7,827名 50.7% 24.3%

5.2 午後問題のジャンル

・問1の情報セキュリティが必須で、問2~問11は、10問中4問を選択する
・ジャンルは毎回固定なので、得意分野を軸に選択する問題を決めておきましょう
・プログラム経験がない人は、プログラミングをイチから勉強するのはかなり大変です。
エンジニアではない人の場合、「問2:経営戦略」「問9:プロジェクトマネジメント」「問10:サービスマネジメント」「問11:システム監査」などを選ぶといいでしょう。

問題番号 出題分野 選択/必須 令和7年春の場合の内容
問1 情報セキュリティ 必須 サイバー攻撃への対策
問2 経営戦略 選択 企業の成長戦略
問3 プログラミング 選択 スライドパズルを解くプログラム
問4 システムアーキテクチャ 選択 ビルエネルギーマネジメントシステムの非機能要件
問5 ネットワーク 選択 社内LANの障害対応
問6 データベース 選択 販売管理システムの構築
問7 組込みシステム開発 選択 電動キックボードのシェアリングシステム
問8 情報システム開発 選択 エラーハンドリング
問9 プロジェクトマネジメント 選択 CCPM(CriticalChainProjectManagement)を用いたプロジェクトのスケジュール管理
問10 サービスマネジメント 選択 容量・能力管理
問11 システム監査 選択 勤務管理に関連するシステムの監査

5.3 問題例

(2)過去問を解いてみよう

令和6年秋の午後の問1(情報セキュリティ)を解いてみましょう。
本当は問題文をしっかり読んだ方がいいのですが、設問をいきなり見ても、結構解けます。
❶設問2

問題文の下線②はこちら

さて、ヒントですが、今回は、「会員テーブルのデータ」が取得されてしまいました。また、情報セキュリティの3要素とは、「機密性」、「完全性」、「可用性」の3つです。

❷設問3

こちら、bは難しいので、無視してください。空欄aは聞いたことがあるかもしれません。

❸設問4

表1はこちら

❹設問5

下線③はこちら

【解答】
❶設問2の解答
機密性
❷設問3の解答
総当たり攻撃を、ブルートフォース攻撃といいます。アニメ『ポパイ』に出てくるブルート(Bluto)は、乱暴で力まかせ(force)ですよね。
a:オ
b:カ

❸設問4の解答
ハッシュ値が同じものを探せばそれが答えです。簡単ですね。イの30781985が正解です。
❹設問5の解答
これは、知識問題です。知らないと解けないのですが、セキュリティの基本的な言葉なので、勉強した人にとっては簡単な問題だと思います。
正解は、「多層防御」です。1つの防御策だけに頼らず、複数の異なる防御手段を重ねて(=多層)防御します。

いかがでしたか?6割正解できていれば、合格ラインです。

5.4 難易度

・合格率を見ていただくと、20数パーセントしか合格していないので、難しい試験です。
・ですが、FEの合格者で基礎がしっかりできていて、かつ、長文を読むのが苦手ではない人からすると、それほど難しいと感じる人もいると思います。
・基本情報(FE)はガッツリとプログラムの問題なので、結構難しいです。ビジネス経験が長い人にとっては、経営戦略、プロジェクトマネジメントなど、技術的なスキル以外が中心の問題との相性がいい場合もあり、応用情報(AP)の方が取り組みやすいという人もいます。

5.5 勉強法

・勉強時間は4カ月程度は取りたい
・参考書で基礎を学ぶ
・午前問題の過去問をひたすら解く
・午後問題を、テーマを絞って過去問をひたすら解く(FEと違い、過去問はたくさんあります)

5.6 合格のコツ

・午後問題のテーマは、得意分野に絞る
・地頭がいい人は、経営戦略とかは得かも
・6割で合格です。4割は間違えられます。けっこう間違えられます。
・記述式なので、答案の書き方は、少し練習が必要です。地道ですが、時間を測ってノートに答えを書き、採点者のつもりで採点をする。自分の答案の書き方のどこが良くなかったのかを、知ることが大事です。
答案の書き方で合否が決まることも有ります。
問題文のヒントを使って答えを導くのが鉄則です。記述式はおそらく部分的があります。わからないなりに、問題文のヒントらしきところを使って何かをかけば、部分点がもらえる可能性があります。上っ面の答えでもいいので、何か書くようにしましょう。そのとき、問題文に全く書いていないことを書いても正解になりません。あくまでも問題文のヒントを使って書くのです。
・また、問題文の言葉を勝手に変えて書いても、不正解になるので注意です。大文字小文字も合わせるようにしましょう。
・たとえば、令和6年秋応用情報の問2の問題文と解答例です。問題文の記述がほぼ答えになっていることがわかってもらえると思います。

6.高度区分

6.1 試験科目一覧


6.2 合格率と難易度

(1)合格率
年度 午後Ⅱの試験 R6秋 R6春 R5秋 R5春
ITストラテジスト 論文- 15.8% - 15.5% -
システムアーキテクト 論文 - 15.0% - 15.8%
ネットワークスペシャリスト 記述 - 15.4% - 14.3%
支援士 記述 15.1% 19.3% 21.9% 19.7%
ITサービスマネージャ 論文 - 15.0% - 15.2%
プロジェクトマネージャ 論文 13.9% - 13.5% -
データベース 記述 17.2% - 18.5% -
エンベデッド 論文 16.9% - 16.6% -
システム監査技術者 論文 16.7% - 16.4% -
(2)難易度に関して

・合格率はどれも10%強であり、とても難しい。
・試験は、論文試験とそれ以外(ネットワーク、データベース、支援士)に分かれる。
・論文試験への適正はあるが、圧倒的に論文試験の方が楽。
・論文試験の中では、知名度が高い試験は人気であり、かつ、受験生のレベルが高くなるので難しくなる。
・論文試験の中では、圧倒的にITサービスマネージャが簡単。言い方が難しいが、受験者層のレベルが高くないことと、運用の試験なので、日常的なヘルプデスクだったりをイメージすればよく、答えやすい。

6.3 論文試験を強く推奨する理由

・取りやすいわりに、知名度が高い。
・勉強する範囲が狭いし、実際、覚えることも少なくて済む。ネットワークスペシャリスト試験なんて、覚えることだらけで、また、どんどん技術が進化するから大変。
・ネットワークスペシャリスト試験などのテックな試験は、自分で答えを考える。答えの大半が問題文に書いてある。なので、論文試験は,問題文の言葉をほとんど使ってそれを膨らませればいい。また、自分の得意分野にもっていって、創作すればいい。
論文といっても国語力は不要。もちろん、芸術的な文章なんて一切不要で、むしろマイナス要素。採点基準に即して、報告書のような文章を書く。
・ネットワークスペシャリスト試験など、午後Ⅱは問題文と設問で10ページほど。一方、論文試験の午後Ⅱの問題文はわずか1ページしかない。読むのが楽。

Q.プロジェクトマネージャに合格するには、プロマネの経験が必要ですよね?

A.入社数年目の若手でも合格しています。経験がなくても合格できます。ただ、自分がプロジェクトマネージャだったらどうやったプロジェクトを運営するか、それをイメージしながら仕事をしておくといいでしょう。

・私の経験で言いますと、ネットワークスペシャリストは3年間の勉強でやっと受かりました。データベーススペシャリストも情報セキュリティスペシャリストも1回では合格できませんでした。どれも苦しかったです。ところが、プロジェクトマネージャは1回の試験で,しかも、たいした勉強もせずに合格できました。(とはいえ試験直前の2か月は,毎日2時間程度の勉強はしたと思います。)そして,テクニカルエンジニア(システム管理)とう今のITサービスマネージャにも,システム監査技術者,ITストラテジストにも1回で受かりました。

6.4 個別の試験に関して

(1)ネットワーク

・試験範囲がとてつもなく広く、ネットワークだけでなく、サーバやクラウド、セキュリティなども問われる。人によりますが、高度の中で、一番難しい試験という人もいます。私も、そう思います。

(2)データベース

・午後Ⅱはモデリングをひたすらやる。レシートを見たら、それをモデリング。モデリングができるかが合格の決めて。モデリングができるようになれば、あとは、午後1などの対策をしっかりやればいいでしょう。

(3)情報処理安全確保支援士

・ネットワークやデータベースと同様に、バリバリの技術系の試験なので、難易度はかなり高いです。
・試験問題は難解で広範囲なのですが、合格率は高度区分で一番高く、ここ4年の合格率の平均は19.7%
・他の高度区分の試験は、午後1(90分)と午後Ⅱ(120分)に分かれているが、令和5年秋から、支援士だけは午後(150分)だけになり、それに応じて、時間だけでなく、問題の量も短くなりました
・問題選択には運があり、運がいいと受かる場合があります。また、難しいのですが、点数の底上げなどがあって、合格になる場合があります。年に2回の試験なので、自然体で勉強し、3回以内に受かればいいと考えるのも選択肢だと思います。
・セキュアプログラミングというプログラミングの経験者でも難しい出題がありますが、これは選択しなければいいだけです。中途半端な知識では太刀打ちできないので、勉強しないことをお勧めします。※その時間を違う勉強に充てましょう。
・評判が悪いのが、資格の維持にお金がかかることです。毎年講習を受ける必要があり、その受講料が2万円で、3年に1回は8万円の講習も受ける必要があります。3年間で14万円ほどかかる計算です。また、登録時にも登録手数料などがかかるのと、各種の書類を役所から取得する必要もあり、なかなか手間です。合格だけして、支援士の登録をしない人もいます。

(4)プロジェクトマネージャ

・PMPの試験は、PMBOKの理解が必要だが、プロジェクトマネージャの場合はそこまでは求められない。コスト管理やスケジュール管理、品質管理など、プロジェクトをマネジメントするなかで必要な日常的な知識があればいい。
・プロジェクトマネージャは、プロジェクトを統括する立場の仕事。自らプログラムを書いたりするのではなく、プロジェクトを管理する。
・知名度が高く、プロマネ不足が長年叫ばれていることから、非常に人気の資格である。
・繰り返しですが、論文試験なので、コツをつかむと、ネットワークスペシャリストやデータベーススペシャリストなどに比べて、かなり楽に合格できたという人も結構いますよ。

(5)ITサービスマネージャ

別途記載します。

(6)ITストラテジスト

6.5 記述式の対策に関して

・午後Ⅰおよび、ネットワークスペシャリストや支援士などの午後Ⅱでは短い記述式での解答が求められます。たまに勘違いされるのですが、間違える理由は、知識不足だけではありません。知識だけを身に付けても点数は伸びません。
・どこで間違えるかを理解しましょう。
 1)知識が不足しているのか
 2)解答の導き出し方が悪いのか
 3答案の書き方が悪いのか
→ノートに答案を書いて、きちんと採点をし、自分に何が不足しているのかを、まずは認識する。認識ができれば、その対策を行う。

7.ITサービスマネージャ

7.1 試験について

(1)どんな試験か

・ITサービスマネジメントという言葉がわかりにくいですが、ITの運用に関する試験と考えてください。具体的には、システムの運用部門にいる人たちが、どのように日々の運用を実施するかが問われます。
・注意点は、ITサービスマネージャとして、「マネージャ」という言葉が入っています。担当者ではなくマネージャなので、故障対応やヘルプデスクなどの実作業をするよりは、チームマネジメントや方針を決めることなどの、マネージャの試験になります。

(2)科目と時間

・午前Ⅰは多岐選択式(4択)で50分で30問を、午前Ⅱも多岐選択式(4択)で40分で25問を解く
・午後Ⅰは記述式で3問から2問を選び、90分で解きます。
・午後Ⅱは論文試験です。2問から1問を選び、120分で、3000文字くらいを書きます。

(3)ITサービスとは

・構築したシステムの運用をするのは、情報システムの運用部門であったり、外部の運用会社が実施します。その運用というのを、システムを利用する人に向けた「ITサービス」として考えているのです。社内であっても、利用部門はお客様と考え、そのお客様にSLA(サービスレベル合意書)として、たとえば、稼働率99.9%を保証し、それを確保するために点検をしたり、故障がおこったらすぐに復旧したり、システムを2重化したりします。

(4)論文の採点基準

・以下が基準ですが、これだとわからないですよね。

(出典:https://www.ipa.go.jp/shiken/2024/eid2eo0000004j83-att/06a_06.pdf
・公表されている評価基準ですが、「設問で要求した項目の充足度、論述の具体性、内容の妥当性」などであり、すごい画期的な内容を書く必要があるのではなく、問われていることにきちんと答えているか、その内容が具体的で妥当かがポイントです。

(5)合格率と突破率

❶合格率

年度 応募者数 受験者数 合格者数 合格率
令和6年 2,879人 2,000人 300人 15.0%
令和5年 2,886人 1,936人 294人 15.2%
令和4年 2,851人 1,954人 289人 14.8%

❷突破率
古いデータで恐縮ですが、H20年のSMの午後Ⅱ試験の評価ランク

評価ランク 内容 合否 人数
A 合格水準にある 合格 383人
B 合格水準まであと一歩である 不合格 271人
C 内容が不十分である 不合格 96人
D 出題の要求から著しく逸脱している 不合格 123人
    873人

午後Ⅰをクリアした873人の中で、午後Ⅱを突破した人(=最終的に合格した人)は383人です。午後Ⅱだけの合格率は約44%もあります。※年度によって上下します。
CとDはそもそも論文として成立していないわけです。もし、最低限、論文として成立させることができる人なら、B以上の中で考えると、58.6%で突破できるという見方もできます。

7.2 過去問

(1)過去問の例

・過去問例(R6年春午後Ⅱ)
https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/m42obm000000afqx-att/2024r06h_sm_pm2_qs.pdf
・2問から1問を選ぶのですが、問2の方が答えやすそうです。

(2)問題を解いてみよう

❶問題(平成19年問3)

問3 作業ミスによる障害発生の防止について
 情報システムの障害は、企業活動に多大な影響を及ぼすことがある。このことから、障害発生の防止をすることは、システム管理エンジニアの重要な業務である。
 障害を発生させれる原因の一つとして、誤操作や確認漏れなどの作業ミスがある。作業ミスを引き起こす原因には、不注意、知識不足、思い込み、慣れなどがあるが、作業ミスの発生を防止するに当たっては、基本動作の徹底、体制の整備、作業手順やシステム上の改善など、あらゆる面での対策を検討しなければならない。その上で、これらの対策を組み合わせて実施することが重要である。
 具体的な対策としては、例えば次のようなものがある。
 (1) チェックリストに基づいた作業の実施
 (2) 複数人での作業の実施と総合確認
 (3) 作業手順書へのチェックポイントの追加
 (4) 重要な操作に対する確認メッセージ表示機能の追加
 また、発生した作業ミスについて、その原因と対策の実施状況を関係者に周知徹底することも、防止策として有効である場合が多い。
 あなたの経験に基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが携わった情報システムの概要と、作業ミスによって発生した障害及びその作業ミスについて、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた作業ミスの原因と、作業ミスを防止するために実施した対策を列挙せよ。また、その中で、あなたが重要と考えた対策について、その理由とともに、工夫した点を中心に具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べた対策について、どのように評価しているか。今後の課題は何か。それぞれ簡潔に述べよ。

❷自分が試験を受けるとして、簡単に書いてみましょう
設問ア 
Q1.作業ミスは何にしましょう?
Q2.発生した障害を何にしましょうか?

設問イ
Q3.作業ミスの原因は何を書きます?
Q4.作業ミスを防止するための対策は何を書きますか?

❸上記の解答例
・問題文に書いてあるものをそのまま使えばいいのです。それで合格できます。
A1.単純な誤操作
A2.ネットワーク停止の障害
A3.不注意
A4.チェックリストに基づいた作業の実施

❹復元答案
1.私が携わった情報システムと作業ミスについて
1.1 私が携わった情報システム
 私が勤務する会社は関西に本社と全国約30ヶ所に営業所と工場を持つ化粧品メーカーである。私はその会社の情報システム部門で、システム管理エンジニアとして勤務している。
 私が携わった情報システムは、この会社の全社ネットワークシステムである。各拠点は通信キャリアのIP-VPNサービスによってネットワークでつながれている。各拠点には、ルータやスイッチングHUBが設置され、我々が管理するネットワーク機器は、合計約100台である。
 このネットワークは全社員約2000名が、本社のサーバに接続したり、インターネットに接続したり、メール等に利用している。工場は24時間操業であることから、このネットワークを停止することは基本的にできない。

・複雑なシステムではなく、簡単なシステムを選定した。ネットワークだけであれば、業務の詳細な説明を入れる必要がなく、採点官がイメージしてもらいやすいと考えた。
・明確なSLAを入れても良かったと感じている。

1.2 作業ミスによって発生した障害及び作業ミス
(1)作業ミスによって発生した障害
 奈良の営業所にてネットワーク変更が必要になった。そこで、情報システム部門の社員が1名で現地に赴き、設定変更作業をすることになった。計画では、ネットワーク変更に該当する約20台のPCだけが、通信が一時的にできなくなると想定していた。ところが奈良営業所のメインのルータへの作業にミスがあり、全PC約100台が通信できなくなった。
(2)作業ミス
 障害を引き起こした作業ミスは、とても単純な誤操作であった。具体的には、奈良営業所のメインルータとバックアップルータに対して間違った設定を投入したため、修復作業をした際に必要な設定を削除してしまった。必要な設定が削除されていることに気がつかないまま設定を有効にしたため、ネットワーク停止の障害が発生した。

・私は理系の人間で、文章が得意ではない。論文は情報処理技術者試験を受けるまではほとんど書いたことが無かった。そこで、文章が不得意なデメリットを埋めるために、短文で書くことと、(1)(2)のように小見出しをつけることで補っている。また、小見出しをつけることで頭の中を整理しながら論文を記述することができた。
・自分では分かって書いているつもりであったが、読み直してみると分かりにくいというのが感想である。試験本番でできる見直し時間は限られている。日頃から文章を見直す癖が重要だと感じた。

2.作業ミスの原因とその対策
2.1 作業ミスの原因と作業ミス防止のための対策
 情報システムの障害は、企業活動に多大な影響を及ぼすため、障害発生防止の対策をすることになった。まず、作業ミスの原因を分析することにした。以下にその分析結果を列挙する。
①不注意:設定自体は非常に簡単な作業であるため、注意力が不足していたと考えた。
②知識不足:知識が不足していたために、確認するコマンドやログなどを的確に活用することができす、ミスに気がつかなかったと考えた。
③思い込み:「自分は間違えるわけがない」との思い込みが強かったことが、確認作業などを十分におこなわなかったことにつながったと考えた。
④慣れ:慣れがあったために、作業手順書をあまり見ずに作業をしてしまったと考えた。
 作業ミスの発生を防止するに当たっては、基本動作の確認、体制の整備、作業手順やシステム上の改善など、あらゆる面での対策を検討しなければならない。私は、これらの対策を組み合わせて、以下を実施した。
①不注意や知識不足による作業ミスを防止するために、チェックリストに基づいた作業の実施を行った。これにより、一つ一つ確実に作業を実施するようになった。
②不注意による作業ミスを防止するために、複数人での作業の実施と相互確認を行った。これにより、複数の目で見ることから作業ミスを防止できるようになった。
③思い込みによる作業ミスを防止するために、チェックツールによる確認を行った。人間によるミスを機械的にチェックすることができるようになった。
④慣れによる作業ミスを防止するために、作業者に対して”作業の重要さ”を意識付けることにした。意識付けにより、作業を慎重に実施するようになった。

・設問では「作業ミスの原因と、作業ミスを防止するために実施した対策を列挙せよ」とある。原因と対策の両方を列挙するのか、対策のみを列挙するのかが悩むところである。文章を読む限り”対策のみを列挙”すればよいと考えられる。私の場合は、安全策をとって”原因と対策”の両方を列挙することにした。
・問題文にある内容をそのまま活用した。例えば、「不注意、知識不足、思い込み、慣れ」。対策に関してもそのまま活用した。オリジナルを出すより、題意に沿うことを優先したからである。オリジナルの内容を出すことはよい事であるが、題意をはずしてしまうのが怖い。自分では題意に沿ったつもりであっても、実際には違うこともある。試験は年に一回しかないので、私は安全策をとることにした。
・ただし、問題文の内容をそのまま転記では合格にならない。対策の中にオリジナルの内容を入れた。

2.2 特に重要と考えた対策とその理由
(1)特に重要と考えた対策 
 複数人による作業の実施と相互確認
(2)その理由
 チェックリストに基づいた作業を実施したとしても、それを確実に行わなければ意味が無い。慣れが進むとチェックリストを使用しないこともあると考えた。
 チェックツールを活用したとしても、ツールでは確認できない内容(例えば、設定を全て消去した場合)においては、効果が無い。完璧な対策ではないと考えた。
 作業者への意識付けはとても重要な対策である。しかし、短期間で意識付けをすることは容易ではないし、意識レベルも社員によってばらばらであると考えた。
 複数人での作業の実施と相互確認はとても有効な策だと考えた。なぜなら、この対策により作業員が増えるコスト増加が発生するが、不注意、知識不足、思い込み、慣れなどの全ての問題に対する対策になるからだ。複数人の作業によるコスト増加と、障害による損害を比較したところ、十分な費用対効果があると判断しいた。
 また、複数人での作業を実施する際に、声による相互確認を実施することと、指で作業を確認することを義務付けた。声を出して設定内容を読み合わせたり、設定内容を指で確認することで、一つ一つの作業を確実に実施できるようになった。

・2.1と同じ理由で、題意をはずさないことを優先するため、問題文にあった対策「複数人による作業の実施と相互確認」を流用することにした。
・ここはオリジナルをたくさん入れるところである。自分の経験を生かして具体的に記載した。
・採点基準の中にある”見識に基づく主張”をするため、複数案の中からメリットとデメリットを整理した。その結果、最善の案を採用したというストーリーにした。

3.対策の評価と今後の課題
3.1 対策の評価
 私が実施した作業ミス防止の対策はとても高く評価される内容であった。なぜなら、対策を実施してから約1年が経過するが、その間、作業ミスが発生していない。また、作業者からは「相互チェックにより、相手に迷惑をかけないように慎重に作業するようになった」と評価をもらっている。また、声に出して読み合わせることと指で確認する作業がとても効果的だった。
3.2 今後の課題
 複数人による作業の実施は効果的であるが、慣れが進むと作業ミスを引き起こす可能性がある。そのためには、作業者に対して”作業の重要性”を意識づけることが重要になる。意識付けは短期的に実施できるものではないので、長期的な活動として取り組んでいきたい。
                                                         以上
・事前に用意した定型文をベースに記載した。一部、問題文に合わせて内容を加筆した。
・2(設問イ)で実施した対策を否定しない内容にした。基本的には「よかった」という評価である。ありきたりにならないように、具体例を簡潔にいれた。
・十分とはとても言えない内容だが、及第点であると感じている。
・この部分は10分程度で一気に書き上げた。